相続登記の義務化
所有者不明土地の解消に向けて、令和6年4月1日から不動産(土地・建物)の相続登記が義務化されました。
所有者不明土地とは、相続登記がされないこと等により
①不動産登記簿により所有者が判明しない
②所有者が判明しても、その所在が不明で連絡が付かない
このような土地をいいます。これにより、土地の所有者の探索に多大な時間と費用が必要となり、公共事業や復旧・復興事業が円滑に進まず、また、民間取引や土地の活用の阻害要因となったり、土地が管理されず放置され、隣接する土地への悪影響が発生したりするなど、様々な問題が生じています。
不動産を相続(取得)した日から3年以内に、相続登記の申請をする必要があります。正当な理由がないのに相続登記の申請を怠った場合には、10万円以下の過料の対象となります。
なお、令和6年4月1日より前に相続した未登記の不動産については、令和9年3月31日までに相続登記をすれば問題ありません。
3年の猶予があるものの、相続で引き継いで名義変更をしていない不動産については、将来的な相続も踏まえ、残されたご家族のためにも、早いうちに整理整頓しておくのが良いですね。
令和6年5月30日(木)、キャッシュレス納付の更なる推進に向けて、金融庁、国税庁、総務省をはじめ、全国知事会や銀行協会など、23団体協同で「国税・地方税キャッシュレス納付推進全国宣言式」が開催されました。
現在利用できるキャッシュレス納付の方法は、下記の5種類です。
①振替納税(口座振替) ②ダイレクト納付 ③インターネットバンキング納付 ④クレジットカード納付 ⑤スマホアプリ納付
将来的に現金納付ができなくなるとまでは考えられませんが、キャッシュレス決済を使うような方向性になっていくことは間違いありません。その一つとして、今年の5月からe-Taxで申告書を提出している法人には紙の納付書(決算や中間納付など)を送らないようにすると国税庁が発表しています。さらに、来年からは申告書の控えに押印しないという対応も決まっており、e-Taxの利用増加をさらに推し進めようとしています。将来的に避けては通れないキャッシュレス納付。今すぐ利用するかどうかは別として、会社としていつでも使えるよう準備を整えておくことは大切です。
(参考)令和4年度 国税のキャッシュレス納付割合
1位:石川県(36.8%)
2位:東京都(34.5%)
3位:島根県(32.6%)
45位:秋田県(20.5%)
46位:青森県(19.9%)
47位:北海道(19.3%)
宿泊費のインボイスの交付
昨年10月から開始されたインボイス制度ですが、インボイス発行に関する各種Q&Aが国税庁のホームページにおいて公表されています。今回は、その中で「予約サイトで事前決済した宿泊予約者に対する適格簡易インボイスの交付」について取り上げます。
当社は、ホテルを運営しています。予約サイトを通じて受けた予約について、予約サイト経由で決済が行われた場合、フロントでは現金の授受等が行われないことから、領収書の交付を行っていません。どのように適格簡易請求書を交付すればいいでしょうか。
【回答】
適格請求書や適格簡易請求書は、その名称を問わず、記載事項を満たしたものであれば、必ずしも領収書や請求書である必要はありません。そのため、予約サイトや旅行代理店等を通じて受けた予約で、かつ、予約サイト等を経由して決済が行われた場合には、領収書ではなく、宿泊明細書など適宜の様式により、以下の記載事項を満たした書類(適格簡易請求書)を交付することが考えられます。
記載事項は以下の通りです。
① 適格請求書発行事業者の氏名又は名称及び登録番号
② 課税資産の譲渡等を行った年月日
③ 課税資産の譲渡等に係る資産又は役務の内容
④ 課税資産の譲渡等の税抜価額又は税込価額を税率ごとに区分して合計した金額
⑤ 税率ごとに区分した消費税額等又は適用税率
このように、宿泊先のホテルから宿泊費の領収書(インボイス)の発行も受けられないこともあり、その場合は、予約サイト等の宿泊明細をダウンロードしておく必要があります。
その際も電子帳簿保存法の関係上、インターネットからダウンロードするデータに関しては、紙に印刷して保存するのではなく、データでPC上に保管することが必要となりますので、併せて注意が必要です。ダウンロード期限が定められている場合もありますので、その都度ダウンロード及び保存をしておきましょう。
交際費とは、交際費、接待費などの費用で、その法人の得意先、仕入先など事業関係者への接待、供応、慰安、贈答などの行為のために支出するものを言います。
この交際費についてですが、これまで1人当たり5,000円以下のものについては交際費から除外して法人税を計算することができましたが、令和6年度の税制改正によりこの5,000円が1万円に引き上げられ、交際費として経費に入れられる額が増えることとなりました。
6月から始まる定額減税
6月から所得税・住民税の定額減税が始まります。
「定額減税」とは、本人+扶養家族の数×3万円の所得税が令和6年6月~12月の給与計算上、源泉徴収される所得税から減額されます。なお、住民税については本人+扶養家族の数×1万円が減額されますが、全ての計算は市区町村で行われます。
①扶養家族の確認
令和5年の年末調整時の扶養人数から変更がないか再度確認しましょう。定額減税については、16歳未満の扶養家族もカウントします。なお、6月2日以降に入社した社員は定額減税の計算をする必要はありません。(年末調整で計算します。)
②給与ソフトの確認
給与ソフトの定額減税用のバージョンアップが5月中には行われると思います。扶養情報が適切に入っていれば給与ソフトが自動計算してくれるのか、それとも、一部手入力があるのか、どこまでソフトが対応してくれるのかをバージョンアップ後すぐに確認しましょう。
なお、Excelや手計算で給与計算を行っている会社は、従業員一人ずつ定額減税額を算出し、定額減税額を使い切るまで残額を管理し、毎月の給与明細に記載しなければならず、事務作業量が大幅に増えます。この機会に給与ソフトを導入することを検討してみてはいかがでしょうか。
①給与明細に定額減税を反映させる
②住民税の特別徴収
例年5月に届く特別徴収の納税通知書・納付書は、定額減税の関係で1ヶ月遅れの6月に届きます。例年6月~翌5月の12ヶ月間での特別徴収だったものが、令和6年度だけ7月~翌5月までの11ヶ月間で特別徴収・納付を行います。6月の給与計算上、住民税の特別徴収は行いませんので、誤って控除しないように注意しましょう。
6月1日時点の扶養家族数が12月までに増減しても、給与計算上、定額減税額は変更しません。6月1日時点の扶養家族数で計算した定額減税額で12月まで給与計算を行います。最終的には年末調整において、12月末時点の扶養家族数にて、定額減税額の再計算と精算を行います。
所得税・住民税ともに引ききれなかった金額は、全て市区町村から給付されることとなっています。
給付の特徴として
①令和5年分の所得から仮計算をし、給付する
(給付の時期を早めるため。夏頃か)
②一万円単位で切り上げ
(例)所得税控除不足額4万7千円
住民税控除不足額1万5千円
4万7千円+1万5千円=6万2千円⇒7万円
③令和6年分の所得が確定した後に、再計算し、給付不足があれば追加給付が行われます。
(①の給付額が多かった場合でも、返納は不要です。)
納付書の事前送付の取りやめ
国税庁は、令和6年5月以降に送付する分から、e-Taxにより申告書を提出している法人等については、納付書の事前の送付を取り止めると公表しています。
これまでは、法人の決算申告にあたっては、申告月の初旬や前月末頃に、税務署、都税事務所、市役所から納付書が届いていましたが、これを今年の5月以降は取り止めるということです。
なお、都税事務所は今のところ納付書・申告書の送付が続いていますが、法人市民税については市町村によってはすでに納付書・申告書が送られなくなっています。
(1)e-Taxにより申告書を提出している法人
(2)紙の納付書を使用しないで納付している法人・個人
e-Taxを利用している、または、インターネットバンキング等で納付している法人等には、納付書は送られてきません。
また、来年からは紙の申告書を提出した場合に、控えに収受印を押さないと国税庁が発表しています。これにより、e-Taxでの申告がさらに増えることが見込まれており、納付書の事前送付の対象法人はほとんど無くなるのではないでしょうか。
源泉所得税の納付書については、毎年12月頃に翌年分が送られてきていますが、この源泉所得税については、今のところは引き続き、税務署から納付書が送られてくる予定となっております。
法人税の中間納付(予定納税)についても、納付書の事前が取りやめとなります。
今までは、税務署から納付書が届くことにより中間納付の時期を確認していた会社もかなり多かったのではないでしょうか。今後、納付書が送られてこなくなった場合に、中間納付の納付漏れが増えることが見込まれますので要注意です。
なお、消費税の中間納付については、源泉所得税と同様に当面は納付が送られてくることが予定されています。法人税と消費税により対応が異なることでも混乱が生じると思われます。
このように、時期の違いはあるものの税務署から送られてくる書類は年々減っていき、最終的には全て電子化されることが予想できます。会社としても納付期限や申告期限の管理は、従来と切り替えて電子データで確認することが求められてきますので電子化への対応が必須となります。
令和6年4月1日以降、申告データをe-Taxで送信する際に、「自動ダイレクト」を選択して送信すると、申告データの送信と併せて「ダイレクト納付手続き」が自動で行われるようになります。
これにより、これまで申告データの送信後に別途行う必要があった「ダイレクト納付手続き」を省略することができるようになりました。
IT導入補助金
令和6年2月16日より、IT導入補助金2024の申請受付が開始されています。
(第一次締め切り3月15日)
IT導入補助金とは、中小企業・小規模事業者等の労働生産性の向上を目的として、業務効率化やDX等に向けたITツール(ソフトウェア、サービス等)の導入を支援する補助金です。
対象となるITツールは、事前に事務局の審査を受け、補助金HPに公開・登録されているものとなります。
また、相談対応等のサポート費用やクラウドサービス利用料等も補助対象に含まれます。
下記5つの枠の中で自社の目的に合ったものを申請することが可能です。
(1)通常枠
自社の課題にあったITツールを導入し、業務効率化・売上アップをサポート
補助率1/2以内 5万円以上150万円未満
(2)インボイス枠(インボイス対応類型)
インボイス制度に対応した会計ソフト、受発注ソフト、決済ソフトに特化し労働生産性の向上をサポート
補助率3/4以内 50万円以下
補助率2/3以内 50万円超~350万円以下
(3)インボイス枠(電子取引類型)
インボイス制度に対応した受発注システムを商流単位で導入する企業を支援
補助率2/3以内 350万円以下
(4)セキュリティ対策推進枠
サイバー攻撃の増加に伴う潜在的なリスクに対処するため、サイバーインシデントに関する様々なリスク低減策を支援
補助率1/2以内 5万円以上100万円以下
(5)複数社連携IT導入枠
業務上つながりのある「サプライチェーン」や、特定の商圏で事業を営む「商業集積地」属する複数の中小企業・小規模事業者等が連携してITツールを導入し、生産性の向上を図る取り組みを支援
ITツールの導入時には、セキュリティ面を考慮することも重要です。また導入後も情報セキュリティ対策の継続や向上を目指す取り組みが重要となってきます。
そのため、IT導入補助金を申請するにあたっては、
「SECURITY ACTION」を宣言することが必須要件となっています。
SECURITY ACTIONとは
中小企業自らが情報セキュリティ対策に取り組むことを自己宣言する制度です。
「中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン」の実践をベースに2段階の取り組み目標があります。
SECURITY ACTIONは、自社で申込みすることが必要であり、また、申込みから受付完了まで1週間以上かかる場合もあり、IT導入補助金の申請を検討している会社は、まずはSECURITY ACTIONの申込みをしておきましょう。
所得税の確定申告
1.確定申告の受付開始
2月16日から令和5年分の所得税確定申告の受付が開始されます。申告・納付期限は3月15日(金)までとなります。不動産所得や事業所得がある方はもちろんのこと、2ヶ所から給与の支給を受けている場合や、医療費控除やふるさと納税の寄付金控除を受ける場合も確定申告が必要となります。
2.所得税の還付申告
医療費控除や寄附金控除を受ける場合の還付申告は、2月16日を待たずに既に受付が開始されています。
税務署が込み合う前に申告した方が還付金の戻りが早いので、お早めに申告することをお勧めします。
3.住宅ローン控除
住宅ローンを利用して住宅を新築した又は住宅を購入した場合は、住宅ローン控除を受けることができます。
初年度は税務署での確定申告が必要となります。(2年目以降は年末調整で控除を受けることが可能)
また、住宅ローン控除の申告を忘れていた場合でも過去5年分については遡って還付申告をすることができますので確定申告を忘れていたとしても諦めてはいけません。
4.年末調整で控除しなかった保険料等
会社勤めの方は、毎年12月に会社で年末調整を受けて所得税の精算を行います。
しかし、年末調整に入れ忘れてしまった保険料などがある場合には、確定申告をすることで所得税の還付を受けられ、また、住民税も安くなります。
会社で社会保険に加入している方でも、国民健康保険や介護保険料を支払っている場合や、お子さんの国民年金を支払っている場合も控除ができますので、入れ忘れがないか今一度確認していただければと思います。
5.ふるさと納税(ワンストップ特例)の注意点
会社で年末調整を受けた方は、ワンストップ特例を利用すれば、確定申告をしなくても、ふるさと納税の控除を受けることができます。
※ワンストップ特例
1年間の寄付先が5自治体以内で、ワンストップ特例申請書を提出している場合には、確定申告をしなくても寄附金の控除が受けられる制度。ただし、医療費控除などで確定申告をする場合は、ワンストップ特例の申請書を提出していても、確定申告で寄付金控除を申請する必要がありますので注意してください。
税務署へ申告書を提出する場合、提出用と控え用の2部を用意して、収受印が押印された控え用を受け取りますが、来年の1月から、この控え用の収受印が押されなくなります。
国税庁は「ご自身で提出年月日の記録・管理をお願いいたします」と言っており、納税者としては非常に困った状況になります。とにかく電子申告や電子化を進めようと外堀を埋めてきていますね。
消費税の変遷など
今年は、消費税のインボイス制度という、消費税法の大改正が入りました。
日本では総人口に占める65歳以上人口の割合(高齢化率)が30%弱であり、今後の人口減少も含めると40年後にはその割合が40%近くまで増えることが見込まれています。
3%から始まり10%まで増税されましたが、年金受給者も含めた幅広い年齢層から徴収できる消費税は、将来的にはさらに税率が上がっていくことが予想されます。
(参考1)消費税率の変遷
1989年(平成元年) 消費税導入3%
1997年(平成9年) 消費税率5%に
2014年(平成26年) 消費税率8%に
2019年(令和元年) 消費税率10%に
2023年(令和5年) インボイス制度導入
一方、諸外国の消費税率(付加価値税)は以下のようになっています。
(参考2)諸外国の消費税率
デンマーク25% スウェーデン25% ノルウェー25% イタリア22%
ベルギー21% イギリス20% フランス20% ドイツ19%
ニュージーランド15% フィリピン12% インドネシア10%
中国13% 日本10% 韓国10% シンガポール8% 台湾5%
日本を含むアジア・オセアニア地域では10%前後である一方、ヨーロッパは概ね20%を超える税率です。消費税率が高い国では、生活必需品には軽減税率を設けいる場合も多く、また、デンマーク、ノルウェー、スウェーデンなどの北欧諸国では、消費税も含めた税金負担 が非常に高い反面、教育費や医療費が無料など福祉関連の保障が手厚くなっています。将来的に日本の消費税率が諸外国並みに上がっていった際に、どのように使われていくのか、税金の使途に注視していかなければなりません。
年末までにやるべきこと
令和5年も残すところ、あと1ヶ月ほどとなりました。
令和5年も残すところ、あと1ヶ月ほどとなりました。今年分の所得税や、将来の贈与税・相続税に関して無理なく節税できることがあれば、やり残しがないようあと1ヶ月の間に確認をしましょう。
1.年末調整
(1)配偶者控除、扶養控除の確認
会社は、年末調整の用紙に記載された扶養情報を基に令和5年分の所得税の計算を行います。扶養関係の記入に過不足がないか再確認しましょう。
なお、扶養親族が亡くなられた場合は、亡くなられた年までは扶養控除を受けることができます。年末調整の用紙には名前を記入し、かつ、備考として死亡した事実を記載するのが良いでしょう。
(2)住宅ローン控除
住宅ローン控除は、初年度は確定申告が必要になりますが、2年目以降は会社の年末調整で処理することができ、確定申告する必要はありません。
その際は、年末残高証明書と税務署から送られてきている住宅借入金等特別控除申告書(令和5年分)を、年末調整の用紙とともに会社に提出しましょう。
源泉徴収票が12月中にもらえる場合は、源泉徴収票を基に計算すると正確な寄附限度額を把握することができます。
3.小規模企業共済
個人事業主や、法人の役員は、小規模企業共済という共済制度に加入することができ(会社規模等の要件あり)、その共済掛金は支払った年に全額所得控除として控除を受けることができます。掛け金は月額千円から7万円までで、1年分前納することも可能です。今年分から加入を検討されている方は早急に手続きが必要です。
110万円(贈与税の基礎控除)を超える贈与を受けた場合には、贈与税がかかります。贈与税は暦年(1月~12月)単位で考えますので、今年分の贈与がまだの方は、いまからでも間に合います。
会社の株式の贈与を検討されている場合は、一度に多くの株式を贈与すると多額の贈与税がかかる可能性があります。毎年少しずつ移転させたい場合は、1年でも早く贈与を始める方が得策です。
5.相続時精算課税制度(生前贈与の特例)
多額の現金や株式を一度に贈与する場合は、通常の贈与では、多額の贈与税がかかります。相続人や孫への贈与ならば、「相続時精算課税制度」という生前贈与の特例が利用できます。この制度では、将来の相続時には再計算が必要となりますが(相続税の計算に含める)、贈与時には2,500万までは贈与税はかかりません。
また、来年からは改正により、「相続時精算課税制度」にも基礎控除110万が創設されるため、この制度の利用を検討される方が増えることが見込まれています。
年末までにというわけではありませんが、墓地や墓石、仏壇、仏具など、相続税の計算上非課税財産とされているものは、生前に購入しておいた方がその分現預金を少なくすることができ、相続税の負担が少なく済みます。
これ以外にも、生命保険金のうち相続人の数×500万円は非課税となりますので、相続税がかかることが見込まれる場合には検討することをお勧めします。
来年からの電子帳簿保存法
自社の請求書対応や、受け取った請求書・領収書がT番号や消費税率の記載があるかの確認など、従来よりも事務量がかなり増加していると思います。
ここに加えて、来年1月からは電子帳簿保存法が本格的に施行されます。分かるようで分からない電子帳簿保存法、実は、3つの内容に分かれています。
(1)会計帳簿・書類のデータ保存(希望者のみ)
①内容・・・税法上保存が必要な会計帳簿や請求書等をパソコン等で作成した場合は、プリントアウトせずにデータのまま保存することができます。
②対象の帳簿・書類
・会計ソフトで作成した仕訳帳や総勘定元帳など
・パソコンで作成した見積書・請求書、納品書、領収書などを取引相手に紙で渡したときの控え
①内容・・・紙の領収書・請求書などは、その書類を紙で保存する代わりに、スマホやスキャナーで読み取った電子データで保存することができます。
②対象の書類
見積書、注文書、納品書、請求書、領収書など、取引相手から紙で受け取った書類など
③スキャナ保存のメリット
読み取った後の紙の書類を廃棄できるので、紙の書類のファイリング作業や保存スペースが不要になります。
④スキャナ保存の問題点
スキャナ保存は、単にPDF等で保存すればよいのではなく、タイムスタンプを付与する必要があるため、市販の電子帳簿保存法対応のソフトを導入する必要があります。
また、書類をスキャンにかけるまでの期間が、「2ヶ月+概ね7日間」と決められていて、数か月前の領収書が出てきても、後からスキャナ保存することはできません。
ここまでの「会計帳簿・書類のデータ保存」と「スキャナ保存」は、希望する事業者のみが検討すれば良い話で、義務ではありません。しかし、最後の「電子取引データ保存」は、来年1月以降義務化されるため、対応が必要となります。
①内容・・・請求書、領収書などを電子データでやり取りした場合には、紙ではなく、電子データで保存しなければなりません。
②対象のデータ
・データでやり取りしたものが対象。紙でやり取りしたものは紙で保存して構いません。
(例)請求書を郵送ではなく、メールで受け取った場合
⇒印刷して紙保管ではなく、PDFデータ等で保管
③保存の方法
・「日付・金額・取引先」で検索できるように保存
PDFの名前で検索できるようにしたり、Excel等で管理簿を作る必要があります。
・改ざん防止のための措置を取る必要あり
「改ざん防止のための事務処理規定を定めて守る」といったシステム費用をかけずに行う方法もあります。事務処理規定のサンプルは国税庁HPに掲載されています。
④検索機能の不要措置
2期前の売上高が5,000万円以下の事業者は、一定の要件を基に、検索機能が不要となります。
AI(人工知能)による税務相談
10月より、国税庁は、
税務相談チャットボット(ふたば)を開始しました。チャットボット(ふたば)では、個人の方の国税に関する相談について、AI(人工知能)により自動回答します。現在対応している相談内容は、令和5年分の年末調整、令和4年分の所得税・消費税の確定申告、そして、インボイス制度に関してです。なお、チャットボットは24時間利用可能で、メニューから選択して質問、文字で入力して質問、の2つの質問方法があります。現時点では、キーワードを入力するとそれに関連した項目が表示され、それを開くと回答が見られるというようなシステムとなっています。
現在のチャットボットは、キーワード検索のような状態であり、税務に関する基本的な項目や必要書類を調べるには効果的ですが、本当の意味でのAI(人工知能)にはまだまだ遠いように思えます。
年末調整はそこまで複雑な内容ではないためチャットボットで十分対応できますが、個人の確定申告など複雑な事情がからむ場合には、チャットボットを参考にしつつ、税務署行くか又は電話することで確認する必要もあるでしょう。なぜなら、あくまでチャットボットの回答は一般的な事項についての説明に限られ、確定申告などの手続きは、最終的には自己責任になってしまうからです。e-taxであったり、AIの活用であったり、国税のIT化の流れは今後さらに進んでいくことは間違いありません。便利なものは積極的に取り入れていき、その上で、適正な申告を効率よく進めていくことが求められています。
今月よりインボイス制度が開始
請求書や領収書など、T番号(インボイスの登録番号)の記載があるものが多く集まってきていると思います。様々な領収書の中でも、「接待交際費」に関する領収書が、インボイスに対応していないものが一番多く含まれるのではないかと予想されます。インボイスの有・無で、経理処理が変わってきますので下記項目について気を付けていきましょう。
(1) インボイス対応の領収書
T番号、消費税率、消費税額、少なくともこの3つが記載されていることを確認しましょう。手書きの領収書では、税率や消費税額が記載されていない場合もありますので、レジから出力するレシートで対応するお店が増えそうです。
(2)インボイスではない領収書
インボイスではない領収書の場合決算時に税務署に納税する消費税の負担が増えてしまいます。その負担を緩和する特例(8割特例)が3年間適用されます。この特例が適用されるためには、消費税率の記載は絶対に必要ですので、記載の有無の確認をするようにしましょう。